野球を格闘技から戦争、それも宇宙戦争にまで昇華(?)させた神マンガ

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『スーパープロ野球軍団物語 愛星団徒』

集英社/刊 松田一輝/著

時速500㎞の超速球!

奇想天外な発想過ぎて遂には野球じゃなくなった野球漫画の怪作!!

野球が単なるスポーツではなく、男の意地と鍛え抜かれた肉体がぶつかり合う格闘技であると教えてくれたのは『アストロ球団』だった。

あまたの死傷者を踏み越え、ホームベースを目指すアストロナイン(9人揃ってなかったが…)の姿に涙した人も多いのでは。そんな『アストロ球団』の思想をさらに推し進め、野球を格闘技から戦争、それも宇宙戦争にまで昇華(?)させた作品が、『スーパープロ野球軍団物語 愛星団徒(あせんだんと)』だ。

『アストロ球団』を超えるスーパープレイの数々と読者の予想の遥かかなたをいくストーリーでありながら、ちっとも話題にならない不遇の作品だが、最終巻のあとがきで作者ご本人が話しているように、“理屈抜きの超大作”であるのは間違いない。そもそも理屈なんて考えていたら1ページも読み進めることができない。まずは、黙ってあらすじを見てほしい。細かいことはその後だ。

『宇宙に死をもたらすネブラが邪悪な力をふるい、スーパー軍団を襲い始めた。
黒い太陽の下、マジック1とした南武ジャガーズと東京ムスタングの対戦は、ネブラに魂を
売った長縞がナインを操って異様な展開になるが、第3次成長でパワーアップした鷹王が500
キロ超速球でピンチをきりぬける。
一方、魔女と化した真理亜がスーパー軍団の一員となった瞳を巨根をふり立てた邪鬼虫に襲
わせる…!』(原文ママ) 

一体何が起きてるのかさっぱりわからないあらすじだが、これはこれで的確に本編の内容を説明しているから、ますます頭が混乱する。

主人公は鷹王旭。18歳になったある日突然、時速200kmを超える速球を投げられるようになったラッキーボーイだ。野球には興味ないと言いつつ、次のシーンでいきなりマウンドに立っているという、ダチョウ倶楽部的演出で鮮烈デビューを果たす。「ピッチャーなんて絶対やらないぞ!」「お前やらないの? じゃあ俺がやるよ!」「いやここは俺がやるよ! 」「え、じゃあ俺も…」「どうぞ、どうぞ!」って感じか。

その頃、アメリカでは原因不明の奇病が大流行。イイズと名付けられたこの奇病、感染すると100%醜く腐って死んでしまう。さらに、イイズ患者にホモが多いことから、アメリカ政府は病原菌の媒介者であるホモを隔離することを決定。これを機にアメリカ全州で魔女狩りならぬホモ狩り始まるというのだ。ちなみに、このエピソード、ストーリーの進行とはほとんど関係ない。丸々削除しても問題ない感じだ。

アメリカでホモが大変なことになっている間も、スーパー軍団の活躍は続く。時速200kmの速球が時速500kmにパワーアップ(最終的にはマッハ1.6に)したり、146対0でコールド勝ちという前代未聞の珍記録を立ち上げ、調子に乗ったり、最強の敵・ネブラが用意した刺客・長縞をやっつけたりしているうちに、ネブラの代表チームGAZZ(ガス)が来日し、地球と人類の命運をかけて戦うことに。

ラストは戦いの舞台を宇宙空間に移し、お互いにひたすらボールを投げあうという、野球よりは雪合戦に近い勝負で雌雄を決する。見事、愛のパワーでネブラに投げ勝った鷹王は、勝利の美酒に酔いながら、彼女とクルージングに出かけ、夜は当然のように激しく結ばれる。バイオレンス一辺倒じゃない、お色気だって任せておけ、そんな作者の心意気を感じさせる見事な大団円だ。最近の漫画の予定調和な展開や緻密だが面白みに欠ける設定に食傷気味なら、ぜひ本作を読んで欲しい。予定調和がもたらす安心感が、漫画にとって重要な要素であると、あらためて気付くだろう。

入手難易度★★★★☆
まったくプレミアは付いてないが、発見は困難。特に最終6巻の入手は至難の業だろう。本
文では触れなかったが、もうひとつの見どころとして各巻の巻末に、クロマティや落合など
一時代を築いた野球選手達による解説というかメッセージのようなものが掲載されている。
しかし、揃いもそろって漫画の内容にはほとんど触れず、自分のことばかり話しているのが
印象的だ。

愛星団徒 6 激闘!コスミック・ファイトの章
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