アイドルとプロレス兼任”という異色の内容のメンバー募集
アイドルとプロレスといえば、古くは『めちゃ×2イケてるッ!』の人気企画「めちゃ日本女子プロレス」(1999年~・大原かおり、小池栄子、堀越のり、吉岡美穂らが登場)に始まり、ホリプロ女子プロレス軍団(HJPG)結成(2002年~・西田夏、久志麻理奈らが参加)、愛川ゆず季や赤井沙希の女子プロ本格参戦(前者が2010年、後者が2013年)、現在OA中のドラマ『豆腐プロレス』(テレ朝系・日曜0時5分~)などなど、アイドルファンには馴染みの深いコンテンツとして成立。それだけ注目度や関心が高いということだが、一方で、一部ファンの間で賛否両論を繰り返してきた歴史があるのも事実、いわゆる“諸刃の剣”のコンテンツとしても知られている。
最近、アップアップガールズ(仮)の妹分ユニットの結成にあたり、“アイドルとプロレス兼任”という異色の内容のメンバー募集が話題を集めているわけだが、“プロレス”というキーワードを、複雑な思いでもって受けとめているアイドルファンは決して少なくないと思われる。
「まず前提として、女子プロレスへの本格参戦と、バラエティの企画やドラマをごっちゃにして考えるのは本末転倒にして無意味ということで(笑)。とりあえず、前者について考えた場合、いまも昔もプロレスに極度に拒否反応を示すファンが一定数いるのは事実でしょう。元々、女子プロレス自体、アイドル的人気を博すジャンルであり、とりわけ美人レスラーが一気に増えた90年代前半以降の動きを背景に、アイドル業界やテレビなどのメディアが注目、接近したのが端緒と思われますが、アイドルがそう簡単にレスラーになれるものでないことは明らか。女子プロレスの一大ブームにおいて、アイドルと女子プロレス両方のファンを大勢生み出してきた実情もある中、その無謀、安直ともとれる試みに、戸惑いや失望を覚える者を多数生み出す結果になりました」(アイドルライター)
失敗(微妙な)例として、真っ先に想起されるのは、前述のHJPG。ホリプロの正統派グラドルの西田夏や元・チェキッ娘の久志麻理奈が、プロのレスラーに“恥ずかし固め”なる屈辱の技で完敗する様は、アイドルファンにとっては極めてキツイ状況、忸怩たるものがあった。
一方、その最大の成功者は、言わずもがな愛川ゆず季だが、彼女の場合は本気の完全転身であり(数々の王座や東スポ認定の女子プロレス大賞も獲得)、赤井沙希ともども稀有なケースと呼べる。成功の半面、純然たるプロレスラーの体型への変貌に接して離れたファンも多く、アイドルとプロレスのコラボが諸刃の剣であることを、改めて思い知らされたケースでもあった。
時代の変容で、昨今はなにかと二刀流がもてはやされる風潮もあり、“世界最強のアイドル”――歌とプロレスを両方真剣にこなしていくというコンセプトは、非常に興味深いものではあるものの、現実問題として“無謀”かつ“非現実的”と考えてしまうのは自然の理だろう。かつて二十代の頃、プロレスミニコミの制作に携わっていたという芸能ライターの織田祐二氏もこう語る。
「オーディション合格の条件として、『週に3日以上、夕方からの練習に参加できる方』というのがまずひっかかります。『後楽園ホール・デビュー』『武道館のメインイベントで』などという壮大なプランを謳うからには、週に7日、それこそ朝から夜まで特訓というのが最低条件かと……。ただ、そうすると、歌のほうが疎かになるわけですが(苦笑)。やはり二刀流は無謀といわざるえないでしょう。ただし、こういうプロジェクトを知った以上は、しっかりとウォッチしていきますよ。どういうプロセスを辿るのか、興味はあるので。合格メンバーのそれもそうですが、某アイドルファンブログでも書かれたように、アプガのメンバーですでにガタイがそれっぽい(笑)森咲樹や佐保明梨あたりの緊急参戦なんて展開も熱望したいところです」
4月に、仙石みなみと佐藤綾乃の卒業(時期は未定)が発表されたアプガにあって、今回の姉妹ユニット結成プランは、心機一転の活性化の意味も込められているように思われるが、はたして、勝算はどの程度あるのか? グループ乱立飽和時代の一つの起爆剤としての役割でも注目したいが、不安のほうが圧倒的に多いと感じるのは筆者だけじゃないだろう。
(文・天然バナナ工場長)
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